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レコード道 アーカイブ

2008年01月30日

"レコードの魅力って何?" - 当店お客様よりの投稿 -

早いものでCDの登場から26年、LPがメインの音楽ソースでなくなってから20年が過ぎました。その後LDがDVDに、カセットテープはMDに移行して20世紀の終わりに次世代CDと謳われたSACDやDVD-Audioが現れた頃のLPは単なる懐かしのコレクターズアイテムとして或いはブームも下火になりつつあったDJの商売道具としての価値しか見えてこない状況でした。
その中で時代がどう変わろうと、一貫してオリジナルLPだけを聴き続けて来た人達がいます。
21世紀に入るとオリジナルLPを忠実に再現した紙ジャケットに最新録音と遜色ない程に鮮烈な音質を得たリマスターCDが続々登場しました。それ以前の古い音源のCD化では劣化したアナログマスターがそのまま使われ如何にも古めかしいノスタルジックな音楽という感じでしたが最新リマスターによって決して過去のものではない未知の音楽としての捉え方でクラシカルなロックに惹かれる若い音楽ファンが増えてきました。
そして、今、世界の最新のオーディオショウに行けば最新録音の新譜重量盤LPを美しく未来的にデザインされた新鋭ターンテーブルに載せて最新技術で製造された新製品の真空管アンプで聴くというシステムが主流となっています。
面白いことに、こうした最新のアナログプレイバックシステムでオリジナルLPを再生すると、その音の鮮度に驚かされます。
オリジナルLP、特に初版は音が良いと言われます。殊に音の鮮度に関しては録りたての新鮮なマスターから作られたLPに勝るものは無いでしょう。
一方でCD用の最新ディジタルマスター(或いはリマスター)を基に作られた重量盤LPというのもCDはおろかSACDさえ凌駕する高音質音楽ソフトとしての評価が急速に高まっています。オーディオファン向けという特殊な世界ではありますがLPがSACD,DVD-Audioとの争いを制して静かにポストCDの位置を確保しようとしています。
レコードというものは基本的に過去のものにはなりません。録音された時代が過去であっても例えばたった今再生された時点でそれは現在の出来事です。LPを再生する人がいなくならない限りLPは過去だけのものではなく現在、そして未来へと繋がるものなのです。
20年前のCDを聴こうと思って久々に取り出したらポリカーボネートが失透白濁してうまく再生出来なかった、音質が劣化していた…CDの記録層は永遠でも保護層の寿命は短かった…。
LPは記録層剥き出しで保護は人の手に委ねられています。愛情のある取り扱いを経てきたなら50年前のオリジナルLPでもレコーディング当時のアーティストの息遣いまで鮮明に蘇ります。
LPを聴くというのは過去の青春の思い出に浸ることでもないしノスタルジックな郷愁から連想されるようなLPが殊更CDより温もりのある牧歌的な音であるというのも普段LPを聴かない人が描く想像上の産物に過ぎません。LPには冷徹に空間を切り裂き重厚な翳りを帯びた厳格で高密度な音が詰まっています。むしろ明るくスッキリした傾向のあるCDの音は聴く人に向こうから寄り添ってくる親しみやすい音であり、LPは聴く者ときっちり向き合って妥協しない部分があり人を音楽へと向かって引き込む魔力があるように思います。
私達はしっかりその魔力に取り憑かれてしまったのですね。

***当店では、お客様からのご投稿をお待ちしています。

2008年02月21日

アナログ新時代へ…。 - 当店お客様よりの投稿 -

昭和から平成へ時代が移り変わる頃、押し寄せるバブルの波に呼応するように音楽ソフトの本流はEP、LPから急速にCDへ切り替わっていきました。
やがて手に入らなくなってしまうのではないかと…交換針やレコードクリーナー等をまとめて買い込んだアナログレコードファンもいたようですが…。
あれから永い時間が流れ平成20年を迎えた今、あの頃では考えられない程の多様なアナログレコードアクセサリーが手に入るようになりました。
世間一般ではCDから配信へと音楽の販売形態が大きな変革を迎えようとする中、貴重なEP、LPのコンディションをより良好に保つ為のクリーナー、洗浄マシン、ディスクフラッター収納ラックやアウター&インナージャケット、より良い音を引き出す為の新鋭カートリッジ、フォノイコライザーアンプ、フォノケーブル、ディスクスタビライザー、ターンテーブルシートet cetera…それもそれぞれかなりの選択肢、ブランド、新製品が市場に出回っています。
世界的にアナログレコードを愛して止まない人の情熱が年々高まっているのは最早動かし難い事実なのでしょう。
それではいったいCDでもメモリーでもなくEP、LPがより濃厚な音楽のフレーバーを私達に伝えてくれるのは何故でしょうか?

真空管アンプからトランジスタアンプに切り替わった頃、トランジスタ…石のアンプは、真空管…球のアンプに比べて冷たい、音に温かみがないと酷評されていました(CDとLPの音の違いについても概ね以下で述べるような石と球の比較と同じようなイメージでとらえられていると思います)が、当時の技術では真空管アンプよりトランジスタアンプの方が初期トラブルが少ない、コンパクトに出来る、生産コストが安い…価格を下げて大量に売れるといったメリットがあり音質の問題は殆ど解消されないままトランジスタアンプが爆発的に普及し真空管アンプは次第に一般的ではなくなっていきました。
確かに部分的な性能やカタログ上のスペックでは高級トランジスタアンプが真空管アンプを凌駕するようになりましたが音色の豊さに関してトランジスタアンプは現在に至るまで真空管アンプを越えることは出来ていません。新しい高級トランジスタアンプが登場するたびに真空管アンプに迫る音質と謳い文句にするわけですが…。
トランジスタアンプはずっと真空管アンプの音色を目指していました。CDがアナログの音色の再現をいつまでも目指して(然し辿り着けないで)いるように。それなら真空管(やLP)を聴き続けたらいいじゃんと思うのですが“便利”“安さ”には勝てなかった。
そしてトランジスタアンプが主流になり真空管アンプの音を知らない人が増えるにつれ、トランジスタアンプの特に苦手なウォームな音が出せるのが真空管アンプというイメージが定着し、真空管アンプの音イコール温かみのある柔らかい音という認識が高まっていきました。然しそれは真空管アンプの魅力のほんの一面に過ぎないイメージであったわけです。
真空管アンプ(アナログレコードも同様に)はウォームなアコースティック楽器の豊かな音色の再現だけに優れているわけではなく例えばクールなヨーロピアンジャズであればその冷んやりとした感触を忠実に再現し沈鬱で内省的(トランジスタアンプやCDはダークトーンがなかなか出ない)な音楽の世界を実像的に描き出してくれるのです。淡々とした世界であれば淡々と濃厚な音楽であれば濃厚に表現するのですね。当たり前の事ですが。

CDとEP、LPの新旧交代でも全く同じことが繰り返されることになりました。確かにCDにはノイズが少ないという音質的に優れた点を持っていましたがCDの普及は生産コストの圧倒的な安さ、コンパクトであること、家電メーカーの思惑によるものでしょう。当時、購入若しくはレンタルしたLPをカセットテープにコピーして聴く、或いはラジカセしか持っておらず最初からLPではなくミュージックテープを購入(アルバム売上の約4割はLPでなくテープだった)する一般ユーザーが多くテープに比べればCDに音質的メリットを強く感じることが出来たと思います。
それでもアナログレコードの音質的魅力に後ろ髪を強くひかれる人が多くいたわけですが家電メーカーとレコード会社は、レコード針がなくなってしまうかのような時代の波的ムードを煽りまくってCDというバスに乗り遅れることのないようケツを叩いて全員を押し込んで発車してしまったわけです。“もうどうしようもないレコードはなくなってしまうんだ…。”

然し21st centuryを迎えて00年代もそろそろ終わろうかという今、私達は何事もなかったかのように真空管アンプに灯をともし新譜重量盤LPのシールドを破り、或いは何十年も昔のオリジナルLPをピカピカにクリーニングしてカートリッジをとっかえひっかえしては、まるで今ロバート・フリップがそこに座って眉間にシワを寄せて演奏しているかのように感じたり、またある時はニック・ドレイクがギターを爪弾きながらボソボソと歌っているのを眺めているように想ったりしながら音楽の感動にドップリと浸って日々を過ごしているのです。
豊富で多様なアクセサリー群に支えられ音楽の魅力を余すところなく引き出す微妙で痒いところに手が届く絶妙な調整が可能である…つくづくアナログレコード再生は永遠に不滅だなと感じてしまいます。
トランジスタアンプはパーツの確保が難しくなり…プリント基盤はより薄くより細かくなり、それに合わせて工場の設備も一新され…重厚なオーディオ用出力素子はとっくの昔に製造が中止…あるメーカーは80〜90年代のストックパーツで細々とアンプを作り、ストックが尽きて生産中止に追い込まれる国産メーカーを尻目に中国を中心に真空管(まだまだ製造は続いています)アンプを手配線(線材は良いものが続々開発されています)で製造する新鋭ブランドが急成長しています。
CDプレーヤーも単品では殆ど売れずドライブはごく限られたメーカーを除いて製造中止となりDVDドライブを流用するなど製造元は苦心惨憺しているようですが精密加工の技術があれば中小メーカーでも充分良いものが作れてしまうアナログターンテーブル、アナログカートリッジ(レコード針、無くなりませんね)は続々と魅力的な新製品が登場しています。
CDをトランジスタアンプで聴くというのは前世紀の遺物のような気配すら漂ってきました。21世紀はアナログレコードを真空管アンプで聴く時代であると小さい声でなら言ってしまっても良いと思います。
LPを真空管アンプで聴く。音楽の圧倒的な感動に浸る。
テレビを見ると、あまり良いニュースは流れなくなりました。思わずポロッと本音を言った人気歌手が袋叩きにあったり。大変な時代を迎えようとしているなと誰もが実感しているところだと思います。
ですから、あまり大きな声では言えませんが、プログレのLPを買い漁る。真空管アンプで聴く。目の前にフリップが。感動に浸る。者にとっては良い時代が来たなと。言ってしまって良いと思います。

2008年03月26日

オリジナルファーストプレスの魅力 - 当店お客様よりの投稿 -

21世紀を迎えたあたりから本格化したプログレッシヴロックの再発ブームもデジタルリマスターによる紙ジャケットCDがほぼ一通り出尽くし(権利の問題からか国内盤がなかなか出ないモノも未だ未だ有りますが…)メーカーも“でかジャケCD”や待望のリマスター重量盤によるLP復刻(欧州のメーカーは紙ジャケよりも力を入れていますね)、新素材の高音質CD等の売れ行きやプログレッシャーの財布の中身を探りつつ音楽配信時代を迎えようという所…。
オリジナルLPも既に30年40年を経て状態の良いモノが減ってきましたからLP再発というのは素直に嬉しいものでレコードクリーニング技術の向上を考えれば、こうした復刻LPが…少なくともあと50年はアナログレコードで安心して聴いていける機会を保証してくれることでしょう。
然しオリジナルLPに永年親しんできたファンとしてはオリジナルLPと再発CD再発LPとの顕著な音の違い…音質の差は勿論ですが全体的な質感、音楽の印象さえ異なって聴こえることにお気づきであると思います。
特に欧州のリマスターCDでは、敢えて現代的な音に作り込み若い世代の人にも聴いてもらえるような傾向があり、それはそれでファンの裾野が広がり好ましいことではありますしLPとまた違った世界観が広がるのは楽しみでもあります。然し日本盤の中にはリマスターで音質は向上したものの、妙に明るく元気な音になってしまいオリジナルLPの深みや重みが消えてしまったようなものもあり、やはり本来の音楽性はオリジナルLPを聴かなければわからない作品が多いと思います。CDで何回か聴いたあとにオリジナルLPを手に入れて初めて本来の良さを知ることが出来た作品も多くあるのです。
日本でリアルタイムにプログレ、70年代ロックを聴いてきた人達の多くは最初に国内盤LPを手に入れた方も多いと思いますが…後になってオリジナルLPを入手して聴いてみると、国内盤と本国オリジナルとの音質の差に愕然とされた方も多いと思います。実際に本国オリジナルLPファーストプレスが今日のような人気を得るようになったのは、世界的に見ても日本の音楽ファン、永年日本盤LPを聴いてきた日本のジャズファン、ロックファンが日本盤と比べた、そのオリジナル…正真正銘の“本物”の素晴らしさに驚嘆し大挙して本国へ買い求めに押し寄せるようになってからの話のようです。
それでは国内盤LPとオリジナルLPとは何故そうした大きな違いが発生するのか?と云うと…マスターテープの世代は、例えば英国であれば本国は親テープ、メイン市場の米国には子テープ、日本には米国経由の孫テープというケースも…。特に英国のレコード会社はマスターを門外不出としデッカなどは米国市場を重視して現地での生産をせず英国工場のオリジナルプレスLPを米国に輸出、然し日本にはマスターコピーではなくメタルマザーを送ってきてプレスさせたと云います。
特に英国デッカが重視したのはマスターの音を生かすも殺すもカッティング次第であり、金属の溝に刻み込んで初めて音に生命力が漲るのだと云います。
LP先進国の英米ではカッティングエンジニアは花形でありデッカのマトリクス記号の末尾のイニシャルはカッティングエンジニアのものであるそうです。
カッティングエンジニアが実際にスタジオでアーティストの生の音に接したりアーティストの意見がカッティングに反映(そこまで拘った演奏家はそう多くなかったでしょうが…)される機会は本国でなければ限りなく可能性は低かったでしょう。
特に70年代初頭の日本では送られてきたマスターコピーを基に元々の音を想像しながらカッティングしていかなければなかったでしょうし、当時の日本ではロック=大音量、うるさい、明るく元気が良いというイメージが先ずあり、繊細であり沈鬱でもある曇天の黒い森の奥深くへと誘う英国ロックに造詣の深いエンジニア、レコード会社スタッフは多くなかったと思われます。
また、LPの登場は第二次大戦後間も無くのことであり敗戦国の独、伊や被害の甚大な仏に比べ英米のLP製造技術は抜きん出ておりそうしたアドバンテージの積み重ねが未だ未だ70年代初め頃には大きかったと思われます。
70年代以降米国のレコードはすっかり薄っぺらくなりオイルショックの影響で英国のLPも品質を落としましたが、初期の英米LPの品質、重量感、そして音質には音楽ファンを強く惹きつけるものがあります。
クラシックファンが好んで聴いているのは特に初期のモノフォニック時代のフルトウェングラーやアンセルメといった偉大な芸術家達が念願叶いやっと長時間録音が可能になった喜びを爆発させ次々と色彩豊かに音楽を奏でていった記録であり、ジャズファンが好むのは初期ステレオによって得られた音像と立体的な空間に繰り広げられた音楽家達のリアルな現実の濃密な魔術であり、そして…ロックファンが好んで聴いているのは、レコードが単に大衆に消費されていく商品としての価値に成り下がる直前、音楽を愛する人達の為だけに永遠に留められるべき芸術の記録としての用途において成熟期にあったアナログレコードの到達点に刻み込まれた、最も自由な形態の音楽表現として凝縮され爆発した、重力と金属が融合し暗澹たる沈痛の叫びと変転するリズム、メロトロンの空想世界とメランコリックな泣きの叙情…短命な超新星の出現と消滅を繰り返した、あの、プログレッシヴな音楽の時代の消えてしまいそうな痕跡の破片…。その記録。

オリジナルLPにはただ楽音が記録されているだけでは無く、その時代の空気や、あの時の若い心を動かした衝動、肌触りや香りも含めて…針を落とせば永遠にその時に留まっていられるかのような錯覚まで刻み込まれています。長い年月を経て磨り減ったジャケットのテクスチュアに時が流れた重みがあります。
また、LPにはCDと違いカートリッジやアクセサリーの交換によって、より自分好みの音を引き出せるという魅力があります。最終的な音決めは再生する人が行うことになります。アナログレコードを再生する一人一人がplayer(演奏者)であると云うことですね。
そうした部分も含めてアナログレコードの音は絶対的な要素と相対的な要素のバランスで最終的に決まります。その絶対的な(アーティストの意思が最も反映された)部分のウェイトが最も重みを持っているのが本国オリジナルファーストプレスであり絶対的な音の指標なのです。
勿論、例えば中低域にエナジーがあり中央に密度の高い音の塊感がある英国オリジナルに対し独盤はフラットなバランスで破綻なくどんなシステムにも馴染みやすいとか、米盤は少し大きめのスピーカーで鳴らすとステレオ感が出て空間が広がり音色も生っぽいとか、70年代後期以降の日本盤は下は出ないが高域は気持ち良く伸びるなど、それぞれ各国のレコードにはその国の文化や指向性にあった個性がありますし、セカンドプレス、セカンドラベル以降のLPでもファーストプレスと遜色ないレコードもありますから価格や自分の好みを考えれば各国盤や後期プレスのレコードにもCDで聴くより遥かに魅力的なレコードは多くあります。
然し、基本であり正真正銘本物であるのは本国オリジナルファーストプレスに尽きると思います。
特に当時の英国のレコードと云うと…ジャケットの手触り、紙質、コーティングの質感、良質なインナーバッグ、盤の厚み、適切な重量感、そして黒光りするレコードの深みのある艶は品質の高さを感じさせ所有する喜びを心地よく満たしてくれるものです。

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