ロンドンちょっとよくばり滞在術 の ウラ 

  手なんて抜けない「そう、そう本」  久保田 暁

「そう、そう本」
――いづみ(帯刀)さんは、この本をそう呼んでいる。
この本を、イギリス滞在経験者に見せると、
「あー、イギリス人ってそうだよね」とか、
「うん、うん。ロンドンの自動車って、歩行者を見ると、すぐにスピードを落としてくれるよね」なんて、イギリス話で盛り上がれるからだ。そして、別々の時期にロンドンで暮らしていた人とも、まるで同じ時間を共有していたような連帯感を持てたりする。
自分で言うのもナンだけど、この本は、いづみさんと僕、そして僕たちの仲間の体験談をふんだんに盛り込んであるので、けっこーおもしろい(と思う)。イラストと文章であきないようなつくりにしてある(つもりだ)し、ロンドンという街の雰囲気を、さまざまなジャンルにわたって、わりと正しく伝えられてもいる(はずだ)。
だから、これからロンドンで暮らしてみたいという人にも、(少しは)役に立つかもしれない。
そして、そんな人がイギリス滞在を経験したあとでこの本をあらためて読んで、「そう、そう」と言ってくれると、僕たちはとてもうれしい。だって、日本のどこかに見知らぬ仲間がいるように感じられるから。
ところで、この本は『イギリスの正しい歩き方ガイド』を文庫化した本だ。
「それじゃあなんでタイトルを変えたの?」。
――本当にその通りだと思う。もし、別の本だと思ってこの本を買ってしまった『イギリスの正しい歩き方ガイド』の読者がいたら、ほんの少し申し訳ないと思う。
どうして「ほんの少し」なのかと言うと、ひとつには、本のタイトルは出版社の一存で新しいものにされてしまって、その点では僕たちの意向はまったく反映されていないから。もうひとつは、文庫化にあたって、レイアウトも文章もずいぶん変えたので、マニア的に読んでもらえれば、「(前の本と比べて)ものすごく変わっている」ことに気がついてくれるはずだからだ。
編集とレイアウトもした僕としては、まったく新しい本をつくるのと同じくらい時間をかけたし…。
最初、文庫化の話をもらったとき、僕は、
「同じ原稿で本を2冊つくれるなんて、まるで大家(たいか)みたいだ」とか「しめしめ。単行本を文庫化するだけだから、あまり仕事をしないでもギャラを稼げるぞ」なんて思ったりもした。
でも結局、いづみさんは取材へ行き、僕はデザインから文章まで大幅に手を入れた。やっぱり僕たちは、この本を自分の分身と思えるくらい愛していて、手を抜くことなんてできないのだ。

 

プロフィール 久保田 曉(くぼた さとる)


東京都中央区八丁堀出身。渡英歴5回。ロンドンに貢いだ金額は400万円あまり。
ロンドン滞在中に恋しく思ったものは、落語とそば。
帰国してから脳裏をよぎるロンドンの風景は、初渡英翌日に学校を探してさまよい歩いた雪の降るロンドン中心街の町並みとにおい。落葉清掃車が走る晩秋の石畳の道。
いづみさんの記憶に残っている、ロンドンがらみの僕の姿は、骨折して帰国したその日の姿だとか。
成田に着いてすぐ僕は、編集者仲間やいづみさんに電話をかけて、いきつけのそば屋で待ち合わせ。ほぼ時間通りにそば屋についたときには、すでにそこには全員が集っていて、僕はそば屋の中へ…。
そのときに大荷物を抱えて、骨折した足を引き摺りながら入っていった僕の姿が、いづみさんには印象的だったとか。…でも、それほど僕はそばが恋しかった…。
 

 

 

 LONDON 2001       帯刀 いづみ

「イギリスの正しい歩き方ガイド」の加筆修正版とはいえそのまま世に送り出すなんて!文庫本化の決定の知らせをもらった時、ちょうど3月にヨーロッパに行く計画を立てていた真っ最中。なーんてタイムリーなんだろう!せっかくなので文庫に2001年度版の最新事情を組み込もうと提案。
編集部から5万円の取材費をせしめ、前の渡英から3年半ぶりに再び降り立ったのです。

んが〜。どうして私はロンドンに交通運がないんだろうなぁー。
96年に1週間の滞在中2度も地下鉄のストライキで、国鉄やバスがもみくちゃで大変だったのに今回も・・・
ロンドンのストライキは事前にわかっていたけれど何故にフランスまでもが!?
リールから乗り込もうと思ったユーロスターが遅れ、それでなくても短い4泊5日(実質上3日!)の取材がけずれる〜!!

久しぶりのロンドンはかなり様変わりしてました。街って変わりゆくんだな、という感じ。
79年に下車できた地下鉄Northern LineのMornington Crescent駅はさびれ、その後封鎖に。98年にリニューアルオープンしたようで、付近の工場地帯もきれいなビルに生まれ変わり見ちがえってたな。

そのNorthern Lineは路線の中でも一番ボロっちい車両、ドブの水を煮染めたようなつきあてだらけの座席で有名だったのに、今やモダンな車両に!

予想はついたけれど、今や街中いたるところにシアトル系コーヒーショップ が。COSTA、Coffee Rrepublicなどイギリス系チェーン店もすでに展開中ではあったけれど影が薄そう。3年前にはこんなにはびこってたっけ・・・?

 

短期間に懐かしいロンドンと新しいロンドンを同時に見たけれど、やっぱり個人的には古いものに固執する保守的なロンドンが好きだな。
で、今回一番ホッとしたのがこんな風景。
ロンドンがどんなに生まれ変わろうとも、この地下にある昔からあるトイレに代表される時代の遺物が、私が恋したロンドンの原点かもしれない。

それにしても・・・

この長いタイトルはいったい・・・
「イギリスの正しい歩き方ガイド」も本当は、「まんが情報板イギリスの正しい歩き方ガイド」が正式なタイトル。
編集部には前作も文庫本もこちら側から候補をいくつも出したのに、ぜんぶ却下。
売れ筋のタイトルを付けるんだろうけど、未だ長すぎて覚えられない。うーむ。

 

プロフィール 帯刀 いづみ(たてわき いづみ)


東京都台東区浅草出身。渡英歴10回。ロンドンに貢いだ金額は500万円あまり??
中学生の頃にイギリス音楽に目覚めロンドンを目指し、79年に初渡英を果たす。
ホームステイ&英語学校歴は84年に4週間。
近年は紅茶とチョコバー好きの久保田さんのために、運び屋となる。

職業:イラストレーター
趣味:旅行、読書、音楽鑑賞、園芸、モルモット
海外旅行歴
アイルランド(ダブリン・ゴールウェイ)
アメリカ(ニューヨーク・グァム)
イギリス(ロンドン・バース・ブライトン・オックスフォード・リバプール・ソールズベリー)
イタリア(ローマ・ミラノ・フィレンツェ・ピサ)
オランダ(アムステルダム・キューケンホフ)
ギリシャ(アテネ・ミコノス島・クレタ島)
スウェーデン(ストックホルム)
スペイン(バルセロナ)
チェコ(プラハ)
デンマーク(コペンハーゲン・オーデンセ)
ドイツ(フランクフルト・ビュルツブルク・ケルン・ベルリン・ハイデルベルク・ローテンブルク・
ブレーメン)
ノルウェー(オスロ)
フランス(パリ・アビニョン・モンペリエ・ニース・ナンシー)
ベルギー(ブリュッセル・アントウェルペン・ブルッヘ・リエージュ・スパ)
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