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2008年02月 アーカイブ

2008年02月21日

アナログ新時代へ…。 - 当店お客様よりの投稿 -

昭和から平成へ時代が移り変わる頃、押し寄せるバブルの波に呼応するように音楽ソフトの本流はEP、LPから急速にCDへ切り替わっていきました。
やがて手に入らなくなってしまうのではないかと…交換針やレコードクリーナー等をまとめて買い込んだアナログレコードファンもいたようですが…。
あれから永い時間が流れ平成20年を迎えた今、あの頃では考えられない程の多様なアナログレコードアクセサリーが手に入るようになりました。
世間一般ではCDから配信へと音楽の販売形態が大きな変革を迎えようとする中、貴重なEP、LPのコンディションをより良好に保つ為のクリーナー、洗浄マシン、ディスクフラッター収納ラックやアウター&インナージャケット、より良い音を引き出す為の新鋭カートリッジ、フォノイコライザーアンプ、フォノケーブル、ディスクスタビライザー、ターンテーブルシートet cetera…それもそれぞれかなりの選択肢、ブランド、新製品が市場に出回っています。
世界的にアナログレコードを愛して止まない人の情熱が年々高まっているのは最早動かし難い事実なのでしょう。
それではいったいCDでもメモリーでもなくEP、LPがより濃厚な音楽のフレーバーを私達に伝えてくれるのは何故でしょうか?

真空管アンプからトランジスタアンプに切り替わった頃、トランジスタ…石のアンプは、真空管…球のアンプに比べて冷たい、音に温かみがないと酷評されていました(CDとLPの音の違いについても概ね以下で述べるような石と球の比較と同じようなイメージでとらえられていると思います)が、当時の技術では真空管アンプよりトランジスタアンプの方が初期トラブルが少ない、コンパクトに出来る、生産コストが安い…価格を下げて大量に売れるといったメリットがあり音質の問題は殆ど解消されないままトランジスタアンプが爆発的に普及し真空管アンプは次第に一般的ではなくなっていきました。
確かに部分的な性能やカタログ上のスペックでは高級トランジスタアンプが真空管アンプを凌駕するようになりましたが音色の豊さに関してトランジスタアンプは現在に至るまで真空管アンプを越えることは出来ていません。新しい高級トランジスタアンプが登場するたびに真空管アンプに迫る音質と謳い文句にするわけですが…。
トランジスタアンプはずっと真空管アンプの音色を目指していました。CDがアナログの音色の再現をいつまでも目指して(然し辿り着けないで)いるように。それなら真空管(やLP)を聴き続けたらいいじゃんと思うのですが“便利”“安さ”には勝てなかった。
そしてトランジスタアンプが主流になり真空管アンプの音を知らない人が増えるにつれ、トランジスタアンプの特に苦手なウォームな音が出せるのが真空管アンプというイメージが定着し、真空管アンプの音イコール温かみのある柔らかい音という認識が高まっていきました。然しそれは真空管アンプの魅力のほんの一面に過ぎないイメージであったわけです。
真空管アンプ(アナログレコードも同様に)はウォームなアコースティック楽器の豊かな音色の再現だけに優れているわけではなく例えばクールなヨーロピアンジャズであればその冷んやりとした感触を忠実に再現し沈鬱で内省的(トランジスタアンプやCDはダークトーンがなかなか出ない)な音楽の世界を実像的に描き出してくれるのです。淡々とした世界であれば淡々と濃厚な音楽であれば濃厚に表現するのですね。当たり前の事ですが。

CDとEP、LPの新旧交代でも全く同じことが繰り返されることになりました。確かにCDにはノイズが少ないという音質的に優れた点を持っていましたがCDの普及は生産コストの圧倒的な安さ、コンパクトであること、家電メーカーの思惑によるものでしょう。当時、購入若しくはレンタルしたLPをカセットテープにコピーして聴く、或いはラジカセしか持っておらず最初からLPではなくミュージックテープを購入(アルバム売上の約4割はLPでなくテープだった)する一般ユーザーが多くテープに比べればCDに音質的メリットを強く感じることが出来たと思います。
それでもアナログレコードの音質的魅力に後ろ髪を強くひかれる人が多くいたわけですが家電メーカーとレコード会社は、レコード針がなくなってしまうかのような時代の波的ムードを煽りまくってCDというバスに乗り遅れることのないようケツを叩いて全員を押し込んで発車してしまったわけです。“もうどうしようもないレコードはなくなってしまうんだ…。”

然し21st centuryを迎えて00年代もそろそろ終わろうかという今、私達は何事もなかったかのように真空管アンプに灯をともし新譜重量盤LPのシールドを破り、或いは何十年も昔のオリジナルLPをピカピカにクリーニングしてカートリッジをとっかえひっかえしては、まるで今ロバート・フリップがそこに座って眉間にシワを寄せて演奏しているかのように感じたり、またある時はニック・ドレイクがギターを爪弾きながらボソボソと歌っているのを眺めているように想ったりしながら音楽の感動にドップリと浸って日々を過ごしているのです。
豊富で多様なアクセサリー群に支えられ音楽の魅力を余すところなく引き出す微妙で痒いところに手が届く絶妙な調整が可能である…つくづくアナログレコード再生は永遠に不滅だなと感じてしまいます。
トランジスタアンプはパーツの確保が難しくなり…プリント基盤はより薄くより細かくなり、それに合わせて工場の設備も一新され…重厚なオーディオ用出力素子はとっくの昔に製造が中止…あるメーカーは80〜90年代のストックパーツで細々とアンプを作り、ストックが尽きて生産中止に追い込まれる国産メーカーを尻目に中国を中心に真空管(まだまだ製造は続いています)アンプを手配線(線材は良いものが続々開発されています)で製造する新鋭ブランドが急成長しています。
CDプレーヤーも単品では殆ど売れずドライブはごく限られたメーカーを除いて製造中止となりDVDドライブを流用するなど製造元は苦心惨憺しているようですが精密加工の技術があれば中小メーカーでも充分良いものが作れてしまうアナログターンテーブル、アナログカートリッジ(レコード針、無くなりませんね)は続々と魅力的な新製品が登場しています。
CDをトランジスタアンプで聴くというのは前世紀の遺物のような気配すら漂ってきました。21世紀はアナログレコードを真空管アンプで聴く時代であると小さい声でなら言ってしまっても良いと思います。
LPを真空管アンプで聴く。音楽の圧倒的な感動に浸る。
テレビを見ると、あまり良いニュースは流れなくなりました。思わずポロッと本音を言った人気歌手が袋叩きにあったり。大変な時代を迎えようとしているなと誰もが実感しているところだと思います。
ですから、あまり大きな声では言えませんが、プログレのLPを買い漁る。真空管アンプで聴く。目の前にフリップが。感動に浸る。者にとっては良い時代が来たなと。言ってしまって良いと思います。

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